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きっとまた、今を懐かしく思う時が来る。



以前のブログでも書いたことがあったのですが、90年代後半に大学の下宿先近くにあったポラダとかドリアデとか当時世界の最先端ブランドを取り扱うインテリアショップに足を踏み入れて、それまで家具や雑貨はホームセンターで買うものと思っていた僕は足の先までしびれるような衝撃を受けたものでした。

そんなおよそ場違いな僕が、ハイブランドひしめくお店の中で居酒屋のバイトの給料でも何とか手が出たのが柳宗理のテーブルウェアで、思えばそこから家具や雑貨の世界にのめり込んでいった気がします。

そこで買ったものは不覚にも割ってしまったり何度かの引越しで行方不明になったりと手元にほとんど残っていなかったのですが、20年近く経つ今でもずっと気になっている存在でした。

2千円ほどで手に入るものですがなぜ買い直さなかったかというと、その頃やっと入ったバイト代で手に入れた時の感動や使っている時のなんとも言えない至福感(半分は急に自分が世界に通じる大人の仲間入りをしたような自己満足みたいなものだと思いますが)は新品を買っても得られない気がしたからなのでした。形は同じだけど自分のモノではない。そんな感覚。


話は変わって先日、福井市の和田中にあったsix plus cafeさんが惜しまれながら閉店されました。自動販売機ですら車じゃないとたどり着けないような山間の農村に住む僕にとっては通勤路にあること、夜遅くまでやっていること、という2条件を満たすだけでも稀有な存在のお店でした。

いわゆるワークショップやイベントなどのライフスタイルカルチャーを発信するお店は今でこそたくさんありますが13年も前からそんなイベントをされてきた、まさに文化の発信地としては先駆者でいらっしゃったと思います。

まだまだ教わりたいことがたくさんだったのでとても残念だったのですが、最後の営業を終了されてから、お店で使われていた柳宗理のカップ&ソーサーを譲っていただきました。

オーナーの金子さんのセンスと知識の深さや考え方が、右も左もわからない手探りで初めてお店を経営する僕にとってはインスピレーションにつながっていて、いつも助けていただいていました。

お店をオープンしてそろそろ2年ですが、準備期間から含めて毎日が少なからず葛藤の連続。己のバックグラウンドの深みの無さに気付かされた日々でもありました。

そんな時、six plus cafeさんであれこれしゃべったり物思いにふけったりする時に傍にあった柳宗理のカップ。それを見る度、口元に運ぶ度に、どうしてあの頃の自分が今の仕事をしたいと思ったのかを思い出していました。

今でもこのカップ&ソーサーにコーヒーを注ぐと大学時代や社会人になりたての、これから続くであろう人生の茫漠とした時間に圧倒されながらも自分だけの何かを掴みたいとあがいていたあの頃を思い出します。

そしてまた今から5年後、10年後、あるいはもっと後の時代にこのカップ&ソーサーの吸いつくようなフィット感の持ち手に指を通す時、お店を出した頃のがむしゃらな毎日や(その頃にはがむしゃらじゃなくてもいいようになっていれば良いですが!)six plus cafe さんでの大切だった時間を思い出して懐かしく思うのかもしれません。

僕にとっての2度目のオンリーワンとなった柳宗理のカップ&ソーサー。今度は大切にしていきたいと思います。そしてEPISOで取り扱う品物も誰かにとって物語のあるモノになっていってくれるよう、また日々の仕事に1つ1つ丁寧に思考を重ねていきたいと思っています。


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